MCAP-CR
多自由度バスレフ型研究所
Audio Engineering Laboratory




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スピーカー再生技術(7)-バスレフ型とは(その6)

 前回は、バスレフ型スピーカーシステムの位相反転動作についてシミュレーションしながら確認しました。今回は、バスレフ型の特徴である位相反転動作の他に、共振動作にも焦点をあてていきましょう。

まず、バスレフ型エンクロージャの基本形を思い出してください。前回示した図を右に再掲します。
 ここで、Mainと書いた部分が空気室で、いわゆる空気ばねを構成する要素です。そして、"1"と記した太い線は、ダクトで、これは、錘を形成します。
 "ばね"と"錘"とくれば、高校生のときに教わった物理の"単振動"モデルというのを思い出しますね。
 単振動には、固有な周波数がありました。これが共振周波数にあたります。共振周波数では、振動が増強されます。ここまでが、高校の物理の範囲です。

Fig.10

 ところが、前回シミュレーションで見たように、この振動系に、振動板という振動装置を加えると、共振周波数以上の周波数には、位相反転という動作が加わり、共振周波数の上の周波数でも、振動が強調されることが分かりました。
 すなわち、バスレフ型の動作には、『共振』と『位相反転』という2つの要素が説明として不可欠なのですが、残念ながら、このような説明にお目にかかることはなく、長岡先生でさえも、この点についてのツッコミはありませんでした。

 この講座は、マイナー講座なので、あまり本に書いていないことを中心に書きます。ですから、バスレフ型の特徴である、『共振』と『位相反転』について両方書いていきます。

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 共振という用語の他に共鳴という用語があります。これらの用語の明確な区別についてははっきりしないようですが、一応、ここでは、モデルとしての錘の振 動について論じる場合(ばね−質点モデル系)には、共振という用語を使い、それ以外を共鳴と呼ぶことにします。学術的に正しい定義というわけではないので ご注意くださいね。
 ということで、ここでは、バスレフ動作は共振ということで取り扱います。

 ここでもう一度右上のFig.10を見てください。これがバスレフ型の基本型です。これは、ボトルと同じような動作をします。すなわち、スピーカーユ ニットの振動板がなく、代わりに板のようなもので塞ぎ、ダクトの付近に口を付けて吹くと、ボトルのように、ボーボーという共振音を発生させることができま す。これが、スピーカー工作の本に説明されている『共振』という状態です。今までに出版されている本の類にはこの程度の説明しかないのですが、これではい ささか説明が不十分です。

 前回のシミュレーションを思い出してみてください。共振状態では、振動板が殆ど振動していませんでした。そして、周波数を高くしてゆくと、振動板の(背 面側の)動きとダクト内の空気の動きとが位相が逆転し、結果として、正面では同じ位相になって出てくるという結果になりました。ここに、共振と位相反転と の違いがあります。ダクトの共振周波数は、ほぼ1点の狭い範囲ですが、位相反転は広い範囲で発生します。この位相反転動作がなければ、バスレフ型は、実用 的な範囲で周波数レスポンスを維持することができません。

 今回は、バスレフ型の拡張型についても触れようと思ったのですが、前置きが長くなってしまったので、拡張型については、次回に書きたいと思います。

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