Project MCAP-CR

多自由度バスレフ型スピーカーシステムの研究開発

物理モデルに基くシミュレーションソフトウェア開発


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はじめに

前回は、三角関数のうち、単位円を使ったサイン、コサイン、タンジェントの定義について書きました。
三角関数は、この部分だけ暗記しても、役立つことは殆どありません。
どのように役立つのか、書ききれないくらい、有効な使い方ができるものです。
慣れてしまうと、水や空気のように、不可欠であり、すべての前提として使うものです。
学校では、三角関数に関する公式をたくさん教わりますが、これらを頑張って覚えるのは、効率のよい勉強法ではありません。
どのように使われていくかを実感として頭に入れてゆけば、公式を覚える必要はありません。
すべての公式は、定義から導けるようになります。
自分にも経験がありますが、試験を受けたとき、暗記した内容は、忘れてしまうものです。
多少の時間のロスはありますが、記憶する部分を最低限にとどめ、試験中に公式を導けば、ほんの少しの間違いですべてを失う危険は避けることができます
公式を丸暗記するというようなリスク管理ができていない方法で、試験に望むのは、バクチと一緒です。
すべてを失うリスクを避けながら、確実に抑えたポイントをかせぐことが、生涯にわたって大切なことです。
今回は、三角関数の微分を理解するために必要な、極座標と回転変換について書きます。
これらのポイントを抑えてゆけば、三角関数は、水や空気のように不可欠なものとして感じられると思います。
水や空気のように感じられるようになれば、もう、それ以上暗記する必要はありません。

極座標

三角関数という概念を使うと、極座標という考え方が理解できるようになります。
通常は、横方向をx、縦方向をyとした直交座標を使って、平面上の任意の点を(x,y)のように座標で表示します。
多くの場合、直交座標だけでも使えますが、極座標を使うことができれば更に便利です。

直交座標と極座標との関係を図3に示します。

直交座標と極座標
図3. 直交座標と極座標

図3を見ただけで、以下の関係がわかると思います。こういうものを公式として丸暗記する必要はありません。図を数式として記述しただけです。

直交座標と極座標

回転変換

図3の点(x,y)を原点を中心として左方向にΦ回転させると、回転後の座標はどうなるでしょうか?
極座標表示であれば簡単ですね。
(r,θ)→(r,θ+Φ)
に移動します。

これが直交座標表示だったらどうなるでしょうか?
直交座標系だと少し面倒です。

しかし、少し工夫すると簡単に覚えることができます。

少し飛躍するようですが、回転変換は、行列で表現します。
行列というのは、ベクトルを拡張したようなものです。

高校1年生で、三角関数を教わるときには、多分、行列もベクトルも教わっていないと思います。
しかし、三角関数を理解するには、行列とベクトルとを知っておく必要があります。

まず、行列を使った回転変換を見てみましょう。 ベクトルと行列とは、次回以降に少し詳しくみることにして、まずは、結果を見てみましょう。 3回勉強してみてわからなければ、いったん先に進め、ともいわれます。 順番は入れ替わりますが、最初に回転変換行列をみてみましょう。 回転変換とは、平面上のある点を中心として、その平面上での特定の点の座標を決められた角度だけ、回転した位置に座標を移すことです。 回転の中心は、一般的には任意ですが、多くの場合は、原点を中心にとります。 原点以外を中心とする場合には、式は変わりますが、やっていることは同じです。 回転変換を表すのに行列を使う理由は、そのほうが表現しやすいからです。 回転変換行列を見つけるために、軸方向の単位ベクトルを回転させてみます。 図4は、x軸方向の単位ベクトルの終点(1,0)とy軸方向の単位ベクトルの終点(0,1)を、原点を中心に回転させたものです。

単位ベクトルの回転
図4. 単位ベクトルの回転
図4に示される通り、原点を中心とする回転変換によって、点(1,0)は、(cosθ,sinθ)に移動し、点(0,1)は、(-sinθ,cosθ)に移動します。
原点を中心として角度θ回転させる行列を、R(θ)とし、原点から点(1,0)へのベクトルをe1とし、 原点から点(0,1)へのベクトルをe2とします。
また、行列表現する場合は、座標を(x,y)のような表示ではなく、縦に並べたほうが都合が良いので、この後は、以下のように表現します。
座標またはベクトルの表記法

このように表記すると、任意の点、x軸方向の単位ベクトル、y軸方向の単位ベクトルは、下記のように表されます。
(8)
これらのベクトルの関係は、(9)式のように表されます。
(9)
任意のベクトルxを回転させる変換は、(10)式のように表されます。
(10)
図4で確認したとおり、単位ベクトルを回転した結果は、(11)のように表されます。
(11)
以上から、回転変換行列は、(12)式の通り求められました。
(12)
学校では、回転変換行列を覚えるよう指導される場合もあるかもしれませんが、以上のようにひとつずつ図や式で確認すれば、 回転変換行列は、一瞬で書くことができるようになります。

今回は、早足で概要をみてきましたが、順序が入れ替わったりしていますので、次回は、ベクトルと行列について、書きます。

オーディオの基礎を理解するためには、学校で教わる知識が不可欠なものです。
また、こうした知識をしっかりと理解すれば、様々なことに応用出来るようになります。
学校で教わることを、受験勉強のツールであると考えないで、役立て方を覚えましょう。


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