Project MCAP-CR 多自由度バスレフ型研究所 Multiple-Degree of Freedom Bass-Reflex Laboratory |
オーディオ放言その1の続きです。 目次(2)
オーディオ放言‐その1‐ オーディオ放言‐その3‐ |
オーディオを楽しむうえで必要なコンポーネントは、下記の通りと思います。
最近では、アナログプレーヤーは、ソフトの入手が難しいため不要と思います。
専用のCDプレーヤーは不要です。
DVD/BRなどのプレーヤは、HDDレコーダと共通のものは、ディスクの交換ごとにテレビ音声が鳴るのでオーディオ専用用途には向きません。
自分の場合は、もう既に古くなってしまった日立のDVDプレーヤを使用しています。
1万円もしないものでしたが、不満は全くありません。
ブラインドで比較すれば、これでも高級CD専用プレーヤと比較して差が判る人は少ないと思います。
これを書いている時点では、DVD/BRプレーヤは国内のメーカー品のものでも9,000円位から入手可能です。
アンプは、大出力を要しないのであれば、プリメインが良いでしょう。
大出力が必要な要件は、数十畳敷相当の部屋で、大音量再生する場合、特に低音の再生限界を30Hz以下として、音にならない振動を再生したい場合に限ると思います。
能率90dB/W-m以上のスピーカーシステムを使用する場合、通常の大音量は、せいぜい数Wで十分なので、プリメインアンプで十分です。
スピーカーシステムは、何でも良いですが、大投資をするのでなければ、能率は90dB/W-m前後以上のものが良いと思います。
一般的には10cm以上のフルレンジで十分でしょう。
20cmフルレンジは、巨大な部屋でない限り持て余すと考えたほうが良いでしょう。
8cmで十分な場合が多いですが、ローエンドは連続音で40~50Hzが限界で、それなりの低音を出すと高音域が物足りなくなるようです。
一般的には公称12cm~16cm位が使いやすいと思います。
電線類は、スピーカーケーブルの場合は、安全に電流を流せればそれで良く、信号ケーブルはノイズが出なければそれで良いと思います。
以下にもう少し詳細を記します。
スピーカーケーブルは、電流を伝えることが目的なので、家庭用電源配線に使用するVCTFケーブルが好適と思います。
VCTFケーブルであっても、高級ケーブルとの直流抵抗の差は無視できるほどしかなく、安全性では高級ケーブルを凌駕します。
VCTFケーブルは、耐圧が300Vなので、高電圧で破損する心配はありません。
大電流を流すことはないので、電線の断面積は0.75SQ~1.25SQで十分なゆとりがあります。
平行コードでも良いですが、床を這う場合の見た目が良くありません。
VCTFは円形断面なので、埃を拭き取りやすいし、床を這っても見た目はそんなに悪くありません。
長岡先生は、断面積5.5SQのVCTケーブル(耐圧600V)を薦めておられましたが、自分は、VCTのメリットを感じないのでVCTFを使用しています。
VCTでもオーディオ用に比べると決して高価ではないので、好みで選んでも良いと思います。
尚、ケーブルの電流容量は、線材が同じなら導線の断面積で決まり、耐圧は、被覆で決まります。
ケーブルが長くなると直流抵抗が増えますが、これは、どの周波数でも同じように減衰するので、アンプのヴォリウム位置で補正可能です。
スピーカーシステムのインピーダンス特性がフラットでない場合には、直流抵抗が変化することで、多少周波数特性が変わりますが、
影響はごく僅かであり検知可能な範囲かどうか分かりません。
線材の材質は、一般用途のタフピッチ銅で十分であり、僅かに直流抵抗の小さい、高純度銅や、銀線を使っても、温度が数度変わった程度の差しかありません。
高級素材を使えばプラシーボ効果はあると思います。
こうした効果は、物理的変化よりプラシーボ効果のほうが大きいでしょう。
高級素材とタフピッチ銅との抵抗の差が気になるなら、短く、太くすれば良いことです。
電線の中の電子の流れ方で音が変わるとする説もありますが、自分には差を検知できると思えないので、他の方にもお勧めもしません。
インターコネクトケーブルは、扱う電力が無視できる程度に微小なので、信号の電圧変化が伝われば十分です。
高級品は全く不要と思います。
通常は1線+シールド、または、2線+シールドのRCAコードを使用します。
線材の材質は重要ではありません。
挿し込んだときに、緩々でなく、しっかり刺さるものを選びましょう。
目をつぶって聴けば、高級品と低級品との差は判別不能と思います。
それよりも、端子との接触抵抗が小さいことが重要です。
接続端子の金メッキは必須ではありません。
高級メッキの場合、金メッキの下にニッケルメッキを施してあるのが普通で、いきなり金メッキでは、剥がれやすく却って信頼性が下がります。
また、金メッキ風の金色メッキもあるらしいので、あまり気にしないほうが良いでしょう。
そう考えれば、ニッケルメッキだけで良いのではないかとも思います。
厚い金メッキは、馴染んで接触抵抗を下げる効果があるので、意味はあるかもしれませんが、僅かに抵抗が下がった分の、音量差は、
ヴォリウム調整も不要な程度かもしれません。
個人的には、柔らかい錫メッキが良さそうに思いますが錫メッキ製品は見たことがありません。
メッキは錆びるので、高級品を永く使うよりも、安物を短いサイクルで買い換えたほうが良いと思います。
キャノンを使うバランスケーブルもありますが、高価なので、態々使う必要はないと思います。
但し、キャノンは抜けにくいので、信頼性が高いものです。
同軸型のプロ用の端子には、抜けにくいBNCタイプがありますが、RCAとは接続できないので使用できません。
自分の経験では、CDを再生するプレーヤーには、性能の差を見出しにくい印象を持っています。
したがって、大量生産で価格の下がっているBDプレーヤを狙ったほうがいいでしょう。
DVDプレーヤでも構いません。
現在では、DAコンバータ自体が汎用品になっており、安いものでも処理能力は十分なので、価格差は出にくいでしょう。
何年も前のことですが、スイス製の高級機と、国内メーカの普及品DVDプレーヤとで、同じDAコンバータを使用していることがばれて
話題になったことがあります。
高級品は、見た目に豪華でいかにも良い音がしそうですが、ブラインドテストで差が判別できるかどうかは、
実施例を知らないので何ともいえません。
実施しようかと思いましたが、ざっと手順を考えると現実的ではないので諦めています。
大量生産品は、品質が安定している場合が多いと思います。
品質の悪い外れ品に当たった場合には、不具合の程度によっては新品交換してもらうか、保証の対象にならない場合には、
諦めて買い換えても、大した金額にはなりません。
100万円の専用機を買うのに比べると、10台買っても1/10の金額でしかありません。
1台で済めば1/100の投資で良いことになります。
DVDプレーヤを使う場合には、起動が遅いかもしれません(著作権表示の処理プロセスの要否を確認するためでしょうか?)。
自分が使っている日立のDVDプレーヤは動作が少し遅いですがCD再生は我慢できる程度の動作速度であり音は悪くありません。
DVDやBRプレーヤを選ぶときに注意しなければならないことは、モニターを使用しなくても操作が可能かどうかということです。
HDD付きのものは、モニターがなければ操作できないので、この点からも適していません。
必要なのは、現在再生中のトラックが表示されることで、これがないと何を聞いているのか分からなくなります。
2012年の9月にスピーカー再生技術研究会のメンバーが集まってアンプのブラインドテストを実施しました。
ブラインドテストでは、ローエンドプリメインと高級セパレートの違いを見出すのが困難でした。
高級品が真価を発揮するのは、限界性能付近で使用する場合です。
超低音を大音量で再生するには、大出力が必要なので必然的に高級機が適しています。
しかし、通常の使い方では、アンプの出力は1W未満なので、ローエンドプリメインで十分です。
むしろ、大出力のものより小出力のほうが、リニアリティーを得やすい領域で使用できて有利です。
上記のブラインドテストでは、高域に差がある、という意見がありました。
しかし、自分はこの意見を支持していません。
高域に差が出た理由は、ウォーミングアップの程度の差であると思います。
上記ブラインドテストでは、A級動作の高級品はウォーミングアップがある程度出来たのに対し、ローエンド品は、AB級なので、
ウォーミングアップが不十分だったと思います。
同じ条件での比較は簡単ではない、ということだけはよく分かりました。
AB級動作の高級品は、放熱性能に優れたラジエータを使用しており、ウォーミングアップに時間がかかるので注意が必要です。
普通に使えば、一度も本領を発揮しないでアンプの生涯を終えるでしょう。
アンプの選択で問題なのは、基本性能を満足していることです。
パワーアンプ(プリメインアンプのパワー段も同じ)の目的は、負荷のインピーダンスが変動しても、入力電圧に比例した電圧を出力することです。
現在のダイナミックスピーカーユニットを使用する場合には、公称負荷インピーダンスが、概ね4Ω~16Ωと低いため、
電圧の増幅は、同時に電力の増幅でもあります。
しかし、あくまでも電圧を増幅した結果が電力の増幅になっているのであり、
負荷のインピーダンスが変われば出力電圧が一定であっても出力電力が変わります。
これが、パワーアンプの正しい動作です。
電流や電力の増幅度を一定にするのは正しい動作ではありません。
通常は、負荷となるスピーカーシステムのインピーダンスは周波数によって異っており、インピーダンスが変われば電力増幅度が異ります。
必要なのは、インピーダンスが違っても、仕様の範囲内(10Hz - 80kHz位)では電圧増幅度が一定ということです。
前記ブラインドテストでは、某国製のアンプで、スピーカーシステムのインピーダンスが違う周波数で、
同じ電圧でパワーを供給できないというものがありました。
ところが、こうした、仕様上の不具合による音の変化を『良くなった』ととらえる人もいるようです。
そういう意見は、ウェブでちらほら見ることができますが、このような個人の嗜好を信じ込んで、正しくない音を信仰するようになってはいけません。
思い起こしてみると、既に閲覧不能になった加銅鉄平さんのBBSでは、電流増幅動作のアンプが良いという誤った主張をする人がいました。
こうした非常識なウソを加銅さん本人が否定しなければならなかったのは異常でした。
誤った動作の結果を良いと感じる人がいるのはしょうがないですが、それを堂々と主張することは、無知を曝け出すことになり、恥ずかしいことです。
自分が薦めるのは、国産のアナログプリメインのローエンド品です。
有名メーカーのものなら基本性能には全く問題ないと思います。
上記のような動作不良のものがあれば、そのメーカーは信用を失ってしまいます。
国産メーカーは良心的なので、ローエンド品でも正しい仕様をきっちりと守っています。
ちなみに、自分は、ヤマハのA-S300という2010年モデルのプリメインアンプを使っています。
2012年の初夏に、送料込みで、27,000円を切る価格で購入しました。
アキュフェーズの入門クラスのセパレートアンプ(10年以上使用しているが定価では合計600,000円とちょっとの製品)と自宅で比較した結果、
自分には両者の差が判別できませんでした。
ブラインドでは、高級品とローエンドプリメインの差は判別しにくいですが、ブラインドではない状態では、音に差を感じます。
ブラインドテストのとき自分はオペレータを担当していたので、どれが鳴っているか知っていました。
その状態では、高級品とローエンド品との間に大きな差を感じました。
プラシーボ効果によるものかもしれませんが、こうした経験から、高級品には、それなりの価値があるのだと感じています。
アンプにはウォーミングアップが必要です。
音楽を聴きながら温まるのを待てばいいのですが、何時間もウォーミングアップをしていたら耳が疲れてしまいます。
そこで、出力端子に8Ω~16Ω程度の直流抵抗を繋いで、ヴォリウムを少しだけ通常より上げて音楽を再生する方法があります。
これは、かなり以前に長岡先生が雑誌に書かれていたものですが、この方法は、火事の原因になります。
実際に火事になった事例もあるそうです。
この方法を実施する場合には、以下の注意が必要でしょう。
上記は、ウォーミングアップで耳が疲れるのを防ぐのが目的です。
最大出力で実施したら、間違いなく事故になる危険な方法です。
出力はせいぜい3W程度にとどめておかなければなりません。
通常の聴き方では1Wを出すことはまずないので、片チャンネル3Wで十分です。
通常もっと大きな出力で使用している人は、普通に音楽を鳴らしておいて、席を外すだけで良いでしょう。
ケーブルを交換すると接触の状態が変わるので、直流抵抗が変わります。
これは、音が変化する要因となります。
また、アクセサリ類の一部には本当に音を変化させる(大抵は劣化させる)ものがあり、音が変わります。
音が劣化してもプラシーボ効果により音は良くなったと感じるのでしょう。
こうした取るに足らない要素を変えて音が変わる(と感じる)最も大きな理由は、音量を変えて比較していることでしょう。
例えば、ケーブル交換時には、アンプのヴォリウムをいったんゼロにする必要があります。
このため、聴取の度にヴォリウムを調整する必要があり、都度音量が変わる可能性が高いと云えます。
また、何かを変えた場合、音の変化に期待するので、ついつい音量を上げがちになります。
このため、音量の差が音の差となって知覚されるのだと考えられます。
その結果、何かを変えると、最初は大きな変化だと感激していても、月日が経過すると何も感じなくなります。
あるとき、元の状態に戻すと『こっちのほうがいいか?』と感じたりします。
これは、自分の経験ですが、同じように感じる人は意外に多いのではないでしょうか。
上記のように、曖昧な差しかないのに、変わったと感じる場合は少なくないでしょう。
このことから、物理的理由が明確でないものには手を出さないほうが良いと思います。プラシーボ効果しか期待できない場合が殆どでしょう。
高級電源ケーブルとか、クリーン電源等の類の効果は非常に疑わしいと云えます。
電源ケーブルについては、導通部の接触状態と線材の断面積、長さくらいしか音の変化に影響する要素はないと思います。
高級機のほうが、導通部の接触が良いとも思えないし、短いケーブルでは、線材の電気抵抗の変化も僅かなので、この部分の差による音の差は無いに等しいでしょう。
クリーン電源の効果も疑問で、電源の電圧変動を吸収するほどの大掛かりなものを別とすると、電源波形の多少の乱れ(高調波歪など)は、
アンプ側の整流回路にある電源トランスと平滑コンデンサでカットされます。
こうして、交流を直流に変えてアンプに電力を供給しているので、交流のときの電圧波形の歪は軽減されるようになっています。
このため、使用しているアンプが高性能であればあるほど、電源波形の歪が音に与える影響は小さくなります。
整流回路がお粗末なアンプであれば、電源波形の歪が音に影響する可能性が高くなるので、クリーン電源の効果は現れるかもしれません。
しかし、品質の良い高級アンプに中途半端なクリーン電源を使用すると、負荷変動の際の電流供給の妨げになり、害のほうが大きいと考えられます。
そもそも安いアンプに高額なクリーン電源を使うくらいなら、高額なアンプを使ったほうが投資効果が大きいでしょう。
自分は、ローエンドアンプをそのまま使っていまするが、音に対する不満はありません。自分の耳が悪いだけだと云われそうではありますが。
自分の場合は、フルレンジドライバーを用いた自作の多自由度バスレフ型システムを主に使用しています。
これがベストで万人にお勧めできるという訳ではないのですが、通常はこれで十分に満足しています。
音だけで云えば、振動板面積にモノを言わせるマルチウェイが欲しいときもあります。
大編成のオーケストラを聴くときには、フルレンジでは面積が足りないと思います。
測定上のレンジは、フルレンジシステムでもある程度カバーできますが、オーケストラの音の厚みを楽しみたいときには、
面積の大きなウーファーを使用したマルチウェイが有利です。
ところが、こういう大型のシステムは、容積の大きな部屋でなければ真価を発揮できないので、結局のところ、フルレンジで十分という結論になっています。
純粋に音を楽しみたいのであれば、周波数大域別に再生ユニットを分けた、マルチウェイ、更に、アンプを分けたマルチアンプのシステムが良いでしょう。
しかし、コストが跳ね上がり、突き詰めてゆくと、家を買えるくらいの金額に達してしまうかもしれません。
オーディオコンポーネントは、最低限のものを揃えれば十分に楽しめるのではないかと思います。
日本メーカーのアンプ、CD/DVD/BRプレーヤ、フルレンジスピーカーの自作システムを、一般用途のケーブル、普通のRCAケーブルで繋げば、
これだけで、かなりの部分をカバーできると考えています。
音を良くする目的で、これ以上投資する場合は、よく検討したほうが良いでしょう。
高額なアクセサリ類の効果は疑問です。
例えば、10万円の電源ケーブルを導入するよりは、そのお金でCDなどのソフトを購入したり、コンサートに通うことを薦めます。