スピーカー再生技術(12)-バスレフ型の一般的拡張型『MCAP-CR』(2)
今回は、MCAP-CRの性能上の特徴について説明します。
MCAP-CRは、バスレフ型の拡張形であり、ダブルバスレフの副空気室を複数並列配置したものです。
このため、ダブルバスレフ型の利点は、すべてがMCAP-CR型の利点となります。
しかし、ダブルバスレフ型には欠点もあります。
ですから、ダブルバスレフ型の欠点が、すべてMCAP-CR型の欠点となっては意味がありません。
このため、ダブルバスレフ型の欠点のうち、大きな部分は、改善されています。
以上を踏まえた上うえで、MCAP-CR型の利点を下記にまとめます。
MCAP-CR型の利点
- シングルバスレフ型よりもローエンドを伸ばす設計ができる
- ダブルバスレフ型よりも低域のディップを少なくする設計ができる
- シングルバスレフ型やダブルバスレフ型よりも、バスレフ型固有のクセを減らすことができる
- 空気室のレイアウトが容易であり、縦長、立方体など、様々なデザインに対応できる
- 空気室の仕切りが箱の補強として機能するため、板材を薄くすることができる
- 方程式モデルがあるため、物理学的なシミュレーションツールを使用することができる
- 一般には出回っていないため、自分だけのオリジナル作品をつくることができる
MCAP-CR型の開発目標は、上記の利点のうちの、1.と2.と6.だけを目標にしていました。
そのうえで、一定の成果を得ることができました。
その後、自分の実験において成果があがり、さらに、自分以外の作例もできてくると、別な特徴が明らかになってきました。
オーディオ趣味において、もっとも重視する人の多い、聴感におけるクセの減少という特徴のあることがわかりました。
シングルバスレフ型においても、低域を欲張らなければ、フラットなレスポンスを実現することは可能です。
特に、ウーファーを用いれば、低域のレスポンスを稼ぎやすいので、カタログ上で重視される、フラットな特性を得ることが容易です。
16cmのウーファーユニットを用いれば、シングルバスレフ型でも40Hz程度まではかなりフラットに再生することができます。
ところが、こうした、カタログ上でのフラットレスポンスには、問題がありました。
実際に、シングルバスレフ型で、共振周波数のレベルを強くすると、その周波数が耳について、強いクセとして感じられます。
ところが、すでに書いてきたとおり、低域のレベルを稼ぐことが、スピーカーシステムの最重要課題なので、低域の量を最重視し、
質については、気にしない人が多くいます。
これは、アマチュアに限るわけではなく、プロ(専門家)においても実際にそのような人がいるようです(日記に書きました)。
私の推測では、生のクラシック音楽に触れる機会がすくないと気づきにくいようです。
シングルバスレフ型は、最も普及した箱ですが、上級者になると、箱の内部に工夫したり、細長い四角形のダクトを用います。
更には、スパイラルダクトという、ダクト内に螺旋状の仕切りを設けたりします。
これらは、ダクトの中の空気の塊の摩擦抵抗を増やすなどして、クセを小さくするための、ノウハウです。
上級者になればなるほど、シングルバスレフ型のクセに違和感をもち、箱やダクトに工夫を施して設計するようです。
続きは次回にしましょう。