MCAP-CR
多自由度バスレフ型研究所
Audio Engineering Laboratory




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スピーカー再生技術(2) - 低音再生とは

 前回は、スピーカー再生の技術は、空気を動かして、圧力を変動させる技術であることと、低い周波数のほうが再生が難しいことを説明しました。

 それでは、低い周波数を再生するためにはどのようにすればよいのかを見てゆきます。

 振動板のゆっくりとした動きでも圧力の変動を発生させたい場合は、どうするか。

 答えは、動かす空気の量を多くすることです。
 では、どうすれば、動かす空気の量を多くすることができるのでしょうか?それにはつぎの2つの方法があります。
  1. 振動板の面積を大きくすること
  2. 振動板(など)の振幅を大きくすること
 周波数が低いということは、振動板の往復の動きがゆっくりであることを意味しています。ですから、空気が逃げないようにするためには、同じ周波数でも振 幅を大きく、結果として速度を速くするか、または、振動板そのものを大きくすることが必要です。振動板を大きくすれば、ウチワを大くするような効果になり ます。大きなウチワのほうが風を送る能力が大きいのと同じです。

 さて、周波数の高い高音はというと、振動板に空気が押されて密になった後、すぐに振動板が戻って、空気を粗にするので、空振りになりにくく、再生は、低音よりも簡単になります。だからこそ、ツィータは、小さな振動板でも十分に効果が出るわけです。

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 既に、書いたように、スピーカー再生技術は、空気を動かす技術です。そして、低音を出すのが最も難しいのです。
 さて、これを読んでいる皆さんは、20Hzの音を聴いたことがありますか?

 自分はというと、よく分からないのです。31Hz位までなら、自分が聞くCDにもしっかりと記憶されているし、自分のシステムでも音が出るのですが、そ れより下は、殆ど出すことができません。出てはいても、すごく小さい音です。そして、振動板を20Hzで振動させると、大きな振幅で、バタバタと音を立て ます。20Hzは、バタバタ、という音ではありません。このバタバタは、高調波歪といいます。つまり、信号の音ではなく、歪が聞こえてきているのです。
 もちろん、生活のなかで、20Hzの音は出ています。例えば、自動車が通るだけで、20Hzの騒音レベルは上がります。それでも、それを音として感じているかどうかというとよく分かりません。

 人間の可聴帯域が、20Hzから20kHzといわれるので、この帯域を再生できなければオーディオではない、と考える人もいます。しかし、そういう人の 一部は 多分20Hzという音を知らないのだと思います。もちろん、口径の大きなウーファーを密閉型の箱に入れれば、20Hzは出ますが、サイズも大きくなるし、 そこまでやっただけの成果を出せるかというと、かならずしもそうではないかもしれません。ものごとは、ほんの少し性能を上げるために、大きなコストを必要 とします。趣味の世界では、際限なくコストが上がります。再生帯域のローエンドを31Hzから30Hzに延ばすだけで、コストが何十%も上がってしまって も不思議ではありません。それでもチャレンジすることには意味があります。しかし、音楽を聴くことを目的にするのだったら、そういう部分は後にとっておい てもいいのかもしれませんね。

 現実的な低音の再生目標は40Hzくらいと思います。オーケストラやオルガン等を聴かないのであれば、50Hzで十分かもしれません。実際には 100Hzくらいまでしか再生できないものを、『重低音だ』、という人もいますので、そこは、自分がどこまでこだわるかによると考えましょう。

 有名なオーディオ評論家の長岡先生は、『重低音』という用語を使いませんでした。定義が明確でなかったためです。オーディオ装置でも、重低音をうたうも のは、大抵は、ラジカセやミニコンポです。ハイエンドオーディオは、重低音なんていいませんよね。低音が20Hzまで出て当たり前だからです。低音の評価 をするときには、何Hzというように数字でするか、量感でするほうが良さそうですね。

 次に、低音を増強する方式として、バスレフ型をみていきましょう。

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管理人: 鈴木 茂