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オフ会の様子

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第2回発表会レポート

2011年9月4日(木)東京都中野ゼロ 視聴覚ホールにて開催


2011年9月4日(日)今年もスピーカー再生技術研究会の発表会を開催することが出来ました。 会場は、中野ZEROの視聴覚ホールという立派なところです。

今回借りられたのは、午前と午後17時までの時間のみだったので、10時のスタートとなりました。 各人30分の持ち時間は多少長めかもしれませんが、結果として良かったように思いました。
各作品の資料は、発表会レポートをご参照ください。資料をダウンロードすることができます。

自分は、ご挨拶、進行の説明と、時間調整を兼ねて最初に登場しました。

紹介したのは、ペットボトルを副空気室に利用した標準MCAP-CR型の作品です。3月にタモリ倶楽部で紹介されたものなので、ご存知の方もいらっしゃったと思います。

この作品のポイントは、音の良し悪しは置いておいて、MCAP-CR型の構造が分かりやすいことです。副空気室やダクトが外から一目で分かります。タモリ倶楽部でも使用したオルガン作品やグノーのミサ曲といったマイナーなソースを鳴らしました。

外観の印象とは違い、低音から高音まで意外にスムーズに再生できました。この時点では入場者が少なかったのが残念でした。一般入場者に午前スタートは少し無理があるかもしれません。


 加藤さんは2作品を発表されました。

最初はダブルバスレフの第二ポートをスパイラルダクトにした作品です。スパイラルの仕切にはビニールホースを使用し、製作工程の簡素化を狙っています。また、簡素化するだけでなく、柔らかい素材を使うことによって、微振動を吸収し、余分な音を抑えることに成功しました。
加藤さんは、スパイラルの無いものも用意してあり、違いを聴き比べることも出来ました。会場の人に好みを聞くと、スパイラル構造のほうが圧倒的に良く支持されました。

もうひとつは、塩ビ管を利用した副空気室が2つの標準的なMCAP-CR型でした。こちらは、少し塩ビ管の癖を感じる部分があったので、調整すれば更に良くなると思います。

加藤さんコメント:
最初に発表させていただいた作品(TUTU-800)は、Stereo誌の自作スピーカーコンテストに出品予定の作品で、構造はアイデア勝負の、人とは違 う方法での低音再生のアプローチを実践してみました。スパイラルを形成するために用いた柔らかい素材(ビニルホース)の影響がどのようなものかを実験し、 参加された皆さんからのコメントを頂きたく考えていました。概ね高評価を頂きましたので、自身を持ってコンテストに応募させていただきました。
また、本会は、発表の場でもあり、検討・実験の場でもあるようにとの会の趣旨ですので、少々の聞き比べをさせていただき、充実した発表をすることができま した。皆さまのご協力に感謝します。また、私自作のユニットの出来が悪く仕様に耐えなかったことから、鈴木さんがお手持ちのユニットをお貸しいただきまし た。本当にありありがとうございました。
2作目につきましては、未完成の作品をお聞かせしてしまい、すいませんでした。頂きましたアドバイスを生かしつつ、完成に向けて調整中です。




今井さんは、様々な測定に挑戦しており、今回は、再生音を計測し、グラフィックイコライザーを用いて作品を良い音特性に調整するデモを実施されました。

調整に使用したのは、金子さんの新型バスレフでした。

最初に調整前の音を聞き、それから調整後の音を聞きました。低域は12dB補正したということで聴きやすい音になりましたが、低域の振幅が大きくなって、中高域の美しさが犠牲になった印象を受けました。

金子さんの作品は、密閉型のエンクロージャを5つに分割し、メインの空気室を4つの空気室を塩ビ管で繋ぐ構造で、内部のダクトによる吸音効果で、振動板背面 の音の雑味を吸収し、美しい中高音を聞かせていました。このシステムは、普通のリスニングルームでバランスがいい特性なので、広い部屋で、グラフィックイ コライザーで強制的に調整するよりも、そのまま使用したほうが良いようです。

今井さんコメント:
金子様
 皆様にスピーカー借用を突然にお願いしたところ、金子様より快くご提供頂き有り難うございました。感謝しております。
 今回発表されました皆様より、スピーカー制作の刺激を受けました。次回のオフ会では、自前のスピーカーを持ち込める様にしたいと思っています。
金子さんコメント:
 今井様、このたびはスピーカーの特性を測定していただきありがとうございました。密閉型なので電気的なロー ブーストに耐えると思って手を上げました。周波数特性の平坦化の実験とあわせ、とても興味深かったです。30Hzから50Hzの間に連続的なインピーダン スの山が確認でき、ヘルムホルツ共鳴器の効果が電気的にも確認できました。また、周波数特性の測定で400Hzより下で音圧低下傾向がみられたということ でした。ヘルムホルツ共鳴器の吸音効果は共鳴周波数の近くで大きいといわれています。今回のように共鳴周波数を30Hzから50Hzの間に設定した場合で も、吸音効果が少なくとも400Hzくらいまで及ぶことが示唆されました。(これは予想よりも高かった。) 吸音材による吸音効果は中高音が主体であるこ とを考えると、ヘルムホルツ共鳴器による吸音は低音にも有効なので良い方法だと思います。その威力は鈴木さんがコメントされているとおりですが、密閉型特 有の音の濁りや音の詰まった感じが従来より大幅に減ったと思います。テンポが速く音源が多い曲や電子音主体の曲で切れ味が要求されるものには、従来型より も音の混濁が少なくかなり聞きやすくなりました。
 共鳴器による低音の増強については、「パイプの径をもっと太くして共鳴の効率を上げれば良いのでは」というご指摘をいただきました。たしかに内径約14?では細い感があります。共鳴器の容積を増やして管径を太くすることは十分可能なので検討してゆきたいと思います。
 低音の歪みが中高音に大きく影響することは今回あらためて感じたことです。サブウーファーもしくはツィーターを追加して2ウェイ化することはさらなる音 質向上のための一つの方向性でしょう。一方で、小口径フルレンジ一発の密閉型での、すべての音域が単一の振動板から放射される音というのも、定位や位相を 重視したい音源をニアフィールドで聞く場合には捨てがたい魅力があります。ふだん自宅の8畳間で普通の音量で聞いている分にはちょうど良い感じだったので すが、今回の会場は広くて、大音量で聞くにはさすがに8?口径のユニット一発では非力でした。

松さんのASURAは、長岡鉄男氏のヒドラを研究した結果行き着いたものです。オリジナルのヒドラはスピーカーユニットが 全部外側を向いています。 ASURAは、スピーカーユニットが軸を外して向き合うように配置されています。このことによって、音源がどこにあるのか効いている人が判別できなくな り、その結果、リアルな音像が再現されるという仮説ということです。
塔の上側の斜面は、試聴を繰り返した結果、良かったので付けてあるそうです。その他にも、この場で説明を受けた人しか分からない事実がたくさんあります。
音は、まるでそこに人がいて演奏しているかのようなリアルさで、聴く人を圧倒しました。ハイエンドを超えた世界が再現されました。

松さんコメント:

 西尾さんは、ソフトな素材を用いて柔らかな音を志向したシステムGAN9を発表されました。筐体はゴム製で手作りです。欠点は高価なことだそうです。
左のシステムは同じユニットを使ったFostexの標準箱です。比較のために持ってこられました。
ユニットはどちらも昨年のStereo誌の付録ですがGAN9はネットワーク付きです。私は工夫を凝らして箱の悪影響を排除したGAN9が良いと思いましたが、 どちらが好きかは好みの違いになるでしょう。ご本人は、厳しい自己評価だったようです。

西尾さんコメント:
ケイこと西尾です。
軟質素材はエンクロージャーに向くか?
という長年の疑問を実際に試してみました。
シリコンゴム製のエンクロージャーはすっきりとした独特の音質がありますが、特長と言えるかは難しく、大きな欠点も利点もないという結論のような気がします。
ただ、扱い方いかんではまだ可能性のある素材ではないかと思いました。
皆様、ありがとうございました。
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 大沢さんの共鳴管は、自立しない懸垂型です。単なる共鳴管ではなく、二重の共鳴管になっています。構造は、スピーカーユニット背面にある小さな空気室にス ロットルを設け、そこから先を共鳴管にするというもの。世界初公開です。全ては1本に繋がっていますが、スロットル(パイプ入り口の絞り)の効果によって、パイプが分割されて別々の動作をします。
また、耳につきやすい周波数の共鳴を抑えるために、感の太さを途中で絞ったり開いたり、曲げたり、一部には紙のパイプを使ったりと、試作過程で追い込んで います。このため、再生された音はかなりフラットで、しかも40Hz以下までを十分な音圧で再生します。外見と音とのギャップで会場を最も沸かせたシステ ムです。
 大沢さんの次の作品は、ポートの切替式MCAP-CR型です。ポートは全面、後面に配置され、ゴム栓をすることで、前面ポート、背面ポートを切り替えることができます。
ポートの切り替えの効果は、会場が広いために、おおきくはならなかったとのことでしたが、私には良くわかりました。また、背面のポートに径違いソケットを 付けたときには音が力強くなるなど非常に興味深いものでした。背面のポートを集合させると任意結合型多自由度バスレフのAICC-CRの音になることも確 かめられました。

大沢さんコメント:
 今年も大変すばらしいオフ会に参加させていただきありがとうございました また大変お疲れ様でした。
関係者の皆さんには目立たない雑事を黙々とお手伝いいただきまして、発表者の方ばかりでなく見学、落札者の方までお手伝いいただき感謝です。

 自分の発表は持ち時間の勘違いで惨憺たる有様で申し訳ありませんでした。
 準備した解説がすべてオミットになりガックリでしたが、音は評価いただきましてありがとうございました 来年また会いましょう。

 高橋さんは、通常ハイファイ用途には用いられない、ユニットを使ったISOBARIKシステムにダブルバスレフを組み合わせました。ユニットの癖が強いた め、PST回路で中高域のレベルを下げています。PSTを外すとゲーム音楽用ユニットの本領発揮でしたが、会場ではPST付きのほうが人気がありました。
美しい形状に美しい仕上げが素晴らしいシステムでした。

高橋さんコメント:
 今回、生まれて初めて、自作スピーカを発表しました。
 思い通りにいかないものだなぁ、と発表を通して痛感する良い機会を得ました。
 また、「自分自身で課題設定し、設計を行い発表する」ということの面白さを再認識できました。
 また来年も発表できれば、と考えています。
会長・副会長・参加された皆さん、どうもありがとうございました。

 急遽参加の石田さんは、ウッドコーンのフルレンジを2ウェイのウーファーとして作られたシステムを発表されました。単なる2ウェイではなく、中高域のレベル を下げる回路も組み込んであるので、ワイドレンジなシステムです。フルレンジユニットをネットワークなしで鳴らす実演もされましたが、ネットワークがある 場合に比べて少しざらついた感じに聞こえました。
 ネットワークは上手に使えば良い音になるという実演でした。

石田さんコメント:
 今回は急遽の参加のため共鳴系を使用したシステムではありませんが、測定をベースにした小型システム例として紹介させて頂きました。
 2段のPST回路等で全帯域のフラット化を図りスーパーツイータ程度の高域付加によりシングルコーンの良さを生かしたワイドレンジシステムを狙いました。
 広い会場なので、少しオーバードライブでしたが、会場の響きの良さに助けられて何とか無事にデモは終えることができました。
 スピーカは聴感による調整も重要ですが、アンプ作り以上に計測による基礎調整が重要だと思います。この例が少しでも皆さんの参考になればと思います。

 発表の終了後はいよいよチャリティーオークションです。個々のシステムを聴き比べるには時間が足りないのが残念でした。松さんのASURA?もあり、大いに盛り上がりました。
 他にFE88ES-RやFE108S等の希少品もあり、オークション品の全て落札されました。合計金額は、108,600円(プラスその後の増があるそうです)となりました。寄付先の領収書は、別途公開します。

来年もチャリティーオークションをやりたいと思います。今年来られなかった方は楽しみにしてくださいね。

今日のイベントが終わって打上がありました。写真は解像度を落としてあるのに参加者の表情は素晴らしいの一言です。

充実した一日を過ごすことが出来ました。


 本日の発表会で発表頂いた皆様、、中野支部の立上げと会場の予約、機材の提供を頂いた加藤さん、機材を運搬してくださったうえに、大沢さんの多重共鳴管の 支持台を提供してくださった大和久さん、貴重な宝物をチャリティーに供出頂いた皆様、また、ご来場頂き、運営委をサポートして頂いた皆様に改めて御礼申し 上げます。

縁の下の力持ちに支えられて大成功の一日でした。
上記の作品の詳細は、イベント情報をご参照ください。

後記(記者:鈴木)

上記のレポートの通り、2011年のオフ会は大成功だったと思います。

2010年に最初の公開オフ会を実施したときは、何が何だか分からずとりあえずやってみただけでした。それでも、来られた方の熱気は凄まじく、参加者の満足度は高かったと思います。

今年はどうしようかと悩んでいましたが、加藤さんに、中野支部の設立と、会場の申込、抽選にご尽力頂いたため、昨年をはるかに凌ぐ立派な会場で実施することが出来ました。また、目立ちませんでしたが、会場にはパンフレットも置いて頂きました。

自作スピーカーのイベントで、関東地区で開催するものには、有名な『ミューズの方舟』さんのコンテストと、『集まれ!塩ビ管スピーカー』さんのオ フ会イベ ントがあります。これらのイベントはどちらも参加型です。しかし、『ミューズの方舟』さんのイベントは、進行が時間まできっちり決まっているのと聴講者が 多いので、聴講者は進行に合せて聴くようになっています。また、『集まれ!塩ビ管スピーカー』さんのイベントは、事前登録が中心で、どちらかと云うと、コ ミュニティーの会という印象があります。

スピーカー再生技術研究会は(というか鈴木は)、どちらかと云うと、コミュティ外の方に来て頂くことを目標にしています。敢 えて云えば、自分は、自作スピーカーに興味がない人にこそ来て欲しいと願っています。何故なら、スピーカー再生(装置だけでなく方法もも含む)のパフォー マンスは、投資額だけで決まるものではないからです。残念ながら、スピーカー再生技術研究会のイベントは、未だ一般には浸透していないため、関係者以外へのアピールは弱いようです。

今回は、昨年よりも多少多い、30名強の入場者(参加者含む)がありました。もう少し多いかと期待していましたが、結果としては、100名入れる会場で も、この程度が丁度かな?という印象を受けました。ぎゅうぎゅうに詰まると、席を変えたり、近くに寄ったりしにくくなってしまうので、折角聴きに来られて も、聴くだけになってしまいます。また、人による吸音効果は大きいので、音が全く違って聞こえてしまうのも問題と思います。

昨年は、アンプやCDプレーヤー等の機材は、鈴木と松さんが持参したもので、一般性に乏しいものでしたが、今年は加藤さんが、高価過ぎない一般機 材を準備 してくださったので、スピーカー再生装置の評価がしやすかったと思います。今年のアンプは、マランツ社のPM7003というプリメインアンプでした。この アンプが素晴らしいパフォーマンスを示しました。普及価格帯のアンプであっても、松さんのASURAでは、ハイエンド級(むしろ上回るかもしれない)の再 生が出来たことは大きな発見でした。これは、全体のパフォーマンスが価格だけでは決まらないことを証明した事実だと思います。スピーカー再生装置以外に特 殊なことをしなくても、普及価格の一般機材で十分ハイエンド級の音を出せることが示されたのは大きな成果だったと思います。

今年は、昨年よりもジャンルが偏らずに皆さんがいろいろな方式を試されたのは、この会を結成した最大の成果だったと思います。自分でやってみるのは億劫でも、結果だけは聞いてみたい、こういう気持ちになる人が増えると、自作が特別な世界ではなくなってくると思います。

大げさな言い方をすれば、こうした活動が、オーディオ技術の底上げに貢献しているのだと実感することが出来ました。

皆さん、どうも有難うございました。



  • イベント情報
  • 2014年のオフ会(中野ゼロにて実施)
  • 2013年のオフ会(中野ゼロにて実施)
  • 2012年のオフ会(すみだ産業会館にて実施)
  • 2011年のオフ会(中野ゼロにて実施)
  • 2010年のオフ会(アカデミー湯島にて)