MCAP-CR
多自由度バスレフ型研究所
Audio Engineering Laboratory




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スピーカー再生技術(6)-バスレフ型とは(その5)

 前回は、バスレフ型スピーカーシステムの位相反転動作について書きました。

 位相反転動作を簡単にまとめると、ダクト内の空気塊が振動板の背面と逆位相になって、その結果、振動板正面と同じ位相になるということです。

 位相が反転した結果、振動板から発せられる低音に、ダクト内部の空気塊という第2の振動板からの低音が付加されて低音が大きくなります。

 ここまでは、いろいろな本やウェブに情報があります。そこで終わってしまっては、進歩がないので、ここからは、バスレフ動作のシミュレーションをしてゆきましょう。

Fig.10

 バスレフのモデルをものすごく簡単に書くと、右上のFig.10のようになります。
 Mainと書いた部分が箱に相当し、上の太い棒"1"がダクトになります。Mainは、主となる空気室を表し、ここにスピーカーユニットが装着されま す。すると、上記のようにダクトの内部の空気塊が位相反転して第2の振動板として低音を補強する効果を得ることができます。
 この部分だけをシミュレーションするのであれば、表計算ソフトで簡単にできるので、バスレフを拡張したMCAP-CR型に対応できるようにしたのが、左 のメニューにあるシミュレーションソフトです。バスレフだけ分別して計算式を作るのは面倒なので、副空気室がひとつのダブルバスレフ型のモデルを使いま す。
 Fig.11のように副空気室が主空気室に較べて十分に大きな場合には、副空気室の影響を無視することができます。例えば、Sub1の部分をリスニング ルームと考えれば納得出来ますね。この場合、ダクト"2"は窓が少し開いているのと同等で、考慮しなくても良いという訳です。
 ですので、このソフトにおいて、副空気室を1つ、副空気室の容量を、約10立法メートルとしてみました。

Fig.11
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 Fig.12 はシミュレータの設定画面です。ここで、青く囲んだ部分は、シミュレーションに必要なパラメータです。左上は、スピーカーユニットの仕様です。そして2段 目左は、箱の容量、3段目左はダクトの設計値です。これは、Fostex社のFE166狽フ取扱説明書の設計例をそのまま採用したものです。また、最下段 は、摩擦損失に関する設定です。実際の摩擦係数はわかりませんので、スピーカーユニットについては、裸の状態で、臨界減衰に相当する値、ダクトは、分かり やすいように摩擦ゼロとしました。2つ目のダクトは何でも良いのですが、動いてほしくないので、摩擦損失を最大限に大きくしました。副空気室を1個とした ので、赤で囲った部分は、シミュレーションに関係なく、無視されます。ダクトの共振周波数は、長岡先生の公式では、約64Hzになります。


Fig.12 シミュレータの設定画面

 設定が終わったら、"Normalized Graph"タブを開くと、20Hzでの応答結果が表示されます(Fig.13)。ここで、Membraneは振動板の速度、Duct1、Duct2はそ れぞれのダクト内の空気塊の速度を示しています。Duct2はどうでも良いのですが、動きが十分に小さいことを確認するための表示しているので、無視して ください。ダクトの位相は、振動板と同様、外側に出るものを、正相として扱っています。
  ここで注目するのは、MembraneとDuct1とが逆相になっていることです。逆相とは、振動板が飛び出すときに、ダクト内の空気が引っ込むことで、 圧力変動を打ち消しあう作用があるので、この周波数は、再生レベルが極端に低くなります。前回のFig.7を参照してください。

Fig.13 固有振動数よりも遅く動く場合

 この画面で左上の"Single Frequency"の下の20Hzとなっている部分の右の上向きの三角をクリックすると、1Hz大きくなります(Fig.14)。クリックしたままホールドすると、どんどん周波数が大きくなります。

 そして同時に、応答のグラフも更新されてゆくので、バスレフ動作を簡単にシミュレーションすることができます。

 余談ですが、このようなシミュレーションは見たことがありません。バスレフの研究が殆ど行われていないということでしょうか?

Fig.14

 周波数を少しずつ上げてゆき、64Hzとしてみました(Fig.15)。公式通りなら、共振周波数となるはずです。まだ少し逆相になっていますが、ダクトの効果のほうが大きいので、共振が始まった周波数と考えても良いのかもしれません。

 このシミュレーションは、外部からの熱の出入りがない、『断熱条件』で実施しています。公式は、温度変化のない『等温条件』と『断熱条件』との間にある ようなので、おそらく、公式は、理論値に修正を加えたものなのでしょう。このため、微妙な差があるのは当然なのかもしれません。



Fig.15

 いずれにしても大きな違いはないので、このままもう少し周波数を上げてみましょう。69Hzまで上げると、振動板の動きが小さいのに対し、ダクトの動き が大きくなっています(Fig.16)。この状態が、共振に相当します。振動板があまり動かないのにダクトが頑張っている状態です。


Fig.16

 さらに1Hz上げて、70Hz にすると、位相が完全に反転しました(Fig.17)。


Fig.17

 さらに80Hzまで周波数を上げると、位相反転の動作がよくわかります(Fig.18)。


Fig.18

 もっともっと周波数を上げてゆくと、位相反転による増強作用はどんどん小さくなります。250Hzでは、ダクトは殆ど効いていません(Fig.18)。


Fig/18

 バスレフの動作をざっと見てきました。以上をざっとまとめると、表1のようになります。

表1 バスレフシステム動作のまとめ
周波数帯
動作
効果
共振周波数より低い周波数
ダクトと振動板が逆相に動作して打ち消しあう
ダクトによる低音増強は、マイナス効果
共振周波数
振動板の動きは小さいが、ダクトは大きく動く
音圧増強効果が最大になる
共振周波数より少し高い周波数
振動板とダクトとは、同相で動く
音圧増強効果がある
共振周波数よりもずっと高い周波数
ダクトの動きは小さい
音圧増強効果はない

 以上のシミュレーションは、このページをご覧になっている方が実行して確かめることができます。また、ソフトウエアのアルゴリズムについて詳しくお知りになりたい場合には、技術文書内の文書に詳細がありますので、そちらをご参照ください。

 皆さん、バスレフの動作の説明について、どのようにお感じになったでしょうか?私は、自分でシミュレーションソフトをつくって実施してみると、市販の本 の説明とは、微妙に違う印象を受けました。バスレフについては、実は、まだ、解明されていない部分が多いのではないかと思います。

 次回は、バスレフの発展型について、見て行きましょう。

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管理人: 鈴木 茂

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