MCAP-CR
多自由度バスレフ型スピーカーシステムの研究開発
物理モデルに基くシミュレーションソフトウェア開発




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製作例     標準型MCAP-CR

5インチ
標準MCAP-CR型モデル
TR130e(18mm厚)
TR130e2(15mm厚)


2012/05/21

目次
  1. シミュレーションの概要
  2. 設計の詳細
  3. 材料一覧
  4. 製作工程
  5. さて、音は?
  6. 2012/06/03追記 5インチ励磁型ドライバモデル (15mm厚)
  標準型MCAP-CRは何度も作ってきたが未だに分からないことが多い。
  このため、2012年からは、周波数応答特性や、位相特性のシミュレーションを実施してきた。
  シミュレーションプログラムも概ね出来上がってきたので、シミュレーションしながら新しい作品にチャレンジしてみた。
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1.シミュレーションの概要

シミュレーションのアルゴリズムは、以下の通りである。
  1. 強制振動モデルの運動方程式を離散化する。
  2. 初期条件を定め、振動板を加振する(加振方法は、サイン波、スィープ、ランダム波から選択)。
  3. 振動板、ダクトマスの各質点の変位を動的に計算し、そこから、速度を計算する。
  4. 各質点の速度に面積で重み付けして、総和を求める。
  5. 速度のベクトルをフーリエ変換し、時間軸を周波数軸にする。
  6. 速度をデシベル値に変換する。

上記の解析を実施すると、ピークやディプの周波数を推定出来る。
この解析プログラムは、未完成で、公開しているのは一部だけであるが、いずれソースコードも含めて公開予定である。

解析を実施したところ、ピークの周波数と別のプログラムで計算した固有振動の周波数とは必ずしも一致しないようであった。
これは、計算に重大な誤りがあるか、この結果が妥当なのかは、現段階では検証が不十分なので結論できない。

以上のことから、今回は、共振周波数の簡易計算シートで目星をを付け、更に、シミュレーションプログラムで確認した。



2.設計の詳細(TR130e/TR130e2共通)

今回のドライバーは、最も使いやすい13cmのフルレンジとし、TB社のW5-1611SAとW5-1880を採用し、同じ設計のものを2式製作した。仕 様は、下記の通りである。
TR130eの仕様
空気室 容量[Litre] ダクト 備考
面積[cm2] 長さ[mm]
主空気室 10
-
-

副空気室1 8
19.6
36
内側ダクト
12.6
90
外側ダクト
副空気室2 12
19.6
54
内側ダクト
12.6
110
外側ダクト
副空気室3 14
19.6
70
内側ダクト
12.6
142
外側ダクト

上述の通り、計算結果には確信が持てないが、設計にあたっては、ローエンドを無理に伸ばさず、概ね33Hz以上を再生することを目標とした。
簡易計算シートでは、推定共振周波数は、下から37Hz、45Hz、61Hz、80Hz、95Hz、134.5Hzとなった。
シミュレーションでは、31Hz、57Hz、83Hz、94Hz、199Hzに大きなピークがあり、34-35Hz、61Hz、63Hz、66Hz、 68Hz、70Hz、87Hz、99Hz、106Hz、121Hz...に細かなローカルピークがある。シミュレーション結果は下図の通りである。縦軸の SPLの値は、加振力を一定とし、変位速度の加重和から空気の動圧を求め、それをデシベル値に変換したものなので、絶対値には意味はない。また、計算にあ たっては、減衰項は無視しているので、ピーク値が突出していることに注意が必要である。


簡易計算はあくまでも簡易であるし、共振周波数で音圧が高くなる確証はない(各質点の位相が相殺しあう可能性もある)ので、どちらもそれなりに考慮する必 要がある。

組立図と切断図(クリックして拡大)。

組立図切断図

3.材料一覧(TR130e)
材料 数量 用途 備考
4尺×8尺×18mm(約1200mm×2400mm× 18mm)合板 1枚/ペア 構造材料 3尺×6尺板を使うと1ペアにつき2枚必要だが半端に余 る。
紙管 40mm内径×1mm厚×1m長 1本/2ペア 外側ダクト 東急ハンズ新宿店で調達したもの。但し、東急ハンズの品揃 えは気まぐれなので常時調達可能かどうかは不明。
もう少し厚いほうが望ましい。
紙管 50mm内径×1mm厚×1m長 1本/2ペア 内側ダクト 東急ハンズ新宿店で調達したもの。但し、東急ハンズの品揃 えは気まぐれなので常時調達可能かどうかは不明。
もう少し厚いほうが望ましい。
紙管 96mm外径、76mm内径
主空気室と第3副空空気室を繋ぐ管 ヤフオクで落札したもの。1本につき、240mm長に切断 したものを1本。正式な規格ではないと思うので、ボイド管など入手可能なもので代用すれば良い(Φ76mmの径と取付方法は変わる)。
[RIT SELECT] RIT-CC1/P(麻布オーディオ) 2個/ペア 接続端子 少し高価な[RIT SELECT] RIT-CC1/GB、または、[RIT SELECT] RIT-CC1/Gでも可能。
ケーブル 1m 内部配線用 1.25SQ程度
スピーカーユニット 2個
W5-1611SA、または、W5-1611SAF
別なユニットでも恐らく大丈夫。穴加工の変更が必要。
注:紙管が入手できない場合は、自分で紙をなどを巻いて作ることもできます。また、96mm管が入手できない場合には、TR130e2型を参照してください。TR130eとTR130e2の基本設計は同じです。


4.製作工程

組立工程を短縮するため、今回は、背面を木ねじ留めとした。背面板には木ねじ用に通し孔を開けておく。
木ねじは皿ネジで、長さは板厚の2倍弱が良い。板厚の2倍以上の長さがあると、締め込んだ時に板が割れる危険性が高まる。
ボンドが乾くまで保持するだけの目的なので強力に締め付ける必要はない。


ダクトは、フランジに差込んでボンドで接着する。
隙間があると良くないので、すみ肉を盛る。下の写真のような状態で乾燥し、乾燥後には、紙の部分に塗装する。
紙の部分に塗装するのは、紙の表面が毛羽立つのと剥がれるのを防止するため。
フランジは、接合面にボンドをたっぷり塗った後、木ねじで止める。
差込フランジを付ける理由は、ダクトが外れるのを防止するため。
人は、必ずダクトに指を突っ込んで運ぶのである。


主空気室と第3副空気室を繋ぐパイプは、第3副空気室側を予め接着しておく。このようにしないと組み立てが大変になる。


まず、内部構造を作る。空気室の仕切り板は、前後を間違えないように注意する。
設計上、上下を間違えることはできないが、前後を間違える可能性があるので、図面を見ながら組立てる。



端金を外すとお全体が見える。今回は左右対称の設計にしたので、組立は比較的容易だった。
この後、板の接合部にある段差を鉋で削って平らにする。0.1mm位の段差でも削っておいたほうが良い。



左右の板を付けると構造は完成。今回は幅を狭くしたため、一番小さい端金で接合が可能だった。
端金で組み立てるには、幅は250mm未満が良い。


薄めたアクリル系ラッカーを刷毛で染み込ませ、3回塗り、乾燥後に、#600空研ぎ用紙やすりで表面を整える。
紙やすりで表面を削るので、刷毛塗りの技術は要らない。根気強く、染み込ませながら塗れば良い。
下塗り工程にはサンディングシーラーというものを使うと厚みが出て美しいそうだが、自分は手持ちのラッカー塗料で下塗りするのに留めた。
最後にアクリルラッカーをスプレーで3回塗ると、塗装は完成。
底板と背面には塗装しなかった。塗装したほうが綺麗だが、背面はネジがむき出しだし、塗っても意味はないと思う。


塗装が完成したら、スピーカーユニットを固定するための爪付ナットを取り付ける。
爪付ナットは、組立前にハンマーで打ち付けるのが普通の方法のようだが、その方法は良くないと思う。
自分は、正面からネジで締め上げて食い込ませるようにしている。
下の写真のように長いネジを通し、この状態でネジを回していくと、爪付ナットがネジで引っ張られて食い込んでゆく。
爪付ナットには不良品が多くネジがかじり付いてしまうことがある。
このようにネジで締め付ければ、爪付ナットの不良を事前に検知してかじりつき事故を防ぐことが出来る。



スピーカーユニットを取り付けるとシステムは完成。
写真下の左側は、TBのW5-1611SA、右側は、同じくTBのW5-1880という、日本未輸入の高級品。
W5-1880が日本に輸入されると、ペアで5万円を超えそうだが、ネオジウムマグネットをふんだんに使っており、ダイキャストフレームは厚くて頑丈であ る。




5.さて、音は?

サイン波で確認すると、40Hz以上が十分な音圧で再生されている。100~150Hz位は少し大人しい印象を受ける。
自分の好みでは100〜150Hzには盛り上がりがないほうが良い。フラットならベストかもしれないが、この程度に大人しめのほうが好みである。
低域側は、33Hzまではなんとか再生できており、オルガンのペダルも十分楽しめる。
Bill Evansの"Walts for Debby"にノイズとして入っている地下鉄の音は、現実的な感覚で聞こえる。このCDに地下鉄の音が収録されていることは知らなかったので、最初は自分 の家の上階で騒いでいるのかと思った。
スピーカーユニットのエージングが済んでいないので、音の評価は難しいが、低音は、W5-1880のほうが芯が強い印象。
高域は、W5-1611SAのほうが聴きやすい印象だが、W5-1880は、紙コーンなのでエージングで音が変わりそうだ。
音はどちらも癖が感じられずにスムーズで、バランス良くまとまり、自分の好みに仕上がった。



6.追記 5インチ励磁型ドライバモデル(TR130e2)

TR130eモデルの音が気に入ったので、Feastrexの励磁型ドライバNf5Ex用の箱(TR130e2)も作成した。
TR130e2型の基本設計は、TR130e型と殆ど同じである。何度もシミュレーションを実施してきた結果、ダクトの長さや容積が、多少変わったところ で殆ど差がないことが分かったので、ぴったり同じ仕様には拘らなかった。
今回は、入手できた板材が15mm厚だったので、設計は板厚に合わせた。また、主空気室と第3副空気室との間にダクトを通すトンネルに使用していた、内径 76mmの紙管が無くなったので、この部分は、材料の板から取る設計に変更した。Nf5Exは、磁気回路が大きいので、主空気室を多少大きくし、また、板 厚が3mm小さくなったので、天板とフロントバッフルに補強材を貼った。また、使用する励磁型ドライバに合わせて、取付穴の寸法を変更し、更に、励磁電源 用のコネクタを取付けた。
内部構造は、下の写真の通りで、主空気室と第3副空気室の接合の部分が違うのと、補強が付いた以外はあまり変わらない。



使用した励磁型フルレンジNf5Exは、Feastrex社の励磁型の最廉価モデルである。アルニコ磁石を使用したモデルもあるが、最近は励磁型のニーズ が上回ってきているので、アルニコ磁石型は、数量がまとまってからの生産になるとのことで、このNf5Exが、実質上の最廉価モデルになる。最廉価モデル と云ってもペアで50万円弱で、励磁用電源を加えると50万円を上回る。Fostexの限定版ユニットを大きく上回る価格帯なので、あまり一般性はない が、生の楽器に近い音色なので、楽器を演奏する人や、PAを使わない生の音楽に接する人には評判が良いようだ。オーディオマニア向けというより音楽ファン 向けのモデルと云ったほうが良いかもしれない。

材料一覧
材料 数量 用途 備考
4尺×8尺×18mm(約1200mm×2400mm× 15mm)合板 1枚/ペア 構造材料 3尺×6尺板を使うと1ペアにつき2枚必要だが半端に余 る。
紙管 40mm内径×1mm厚×1m長 1本/2ペア 外側ダクト 東急ハンズ新宿店で調達したもの。但し、東急ハンズの品揃 えは気まぐれなので常時調達可能かどうかは不明。
もう少し厚いほうが望ましい。
紙管 50mm内径×1mm厚×1m長 1本/2ペア 内側ダクト 東急ハンズ新宿店で調達したもの。但し、東急ハンズの品揃 えは気まぐれなので常時調達可能かどうかは不明。
もう少し厚いほうが望ましい。
[RIT SELECT] RIT-CC1/P(麻布オーディオ) 2個/ペア 接続端子 少し高価な[RIT SELECT] RIT-CC1/GB、または、[RIT SELECT] RIT-CC1/Gでも可能。
ケーブル 1m 内部配線用 1.25SQ程度
スピーカーユニット 2個
Feastrex NF5Ex他、13cm口径のフルレンジユニット。NF5Ex以外を使用する場合は、開口形状の変更が必要。

励磁型なので、励磁電源接続用のコネクタが必要である。Feastrexでは、表面がプラスチックのものを使っているが、自分は、電流容量の大きな、産業 用のコネクタを採用した。秋葉原のパーツショップでも普通に購入できるもので、下記のものを選定した。この部品である必要はないが、別のものを使用する場 合、それに合わせた加工が必要になる。

励磁電源用コネクタ(励磁型以外は不要)
部品名称 部品型番 数量 備考
レセプタクル HS16R-3(71) 2
ヒロセ電機(株)製 電流容量7A
プラグ HS16P-3(71) 2
ヒロセ電機(株)製 電流容量7A

図面は、下記の通りである。

組立図
切断図

Nf5Exは、穴加工が面倒なので、ちょっとした工夫が必要になる。
自分の場合、下記の順番で加工した。
  1. 直径135mmの穴だけ予め開けておく
  2. 裏面から見た原寸大の穴 加工図を作る(ネジ穴の位置も書いておく)
  3. 穴加工図の中央にある、直径135mmの部分を切り抜く
  4. 板の穴の裏面と紙の穴とを合わせて重ねセロテープ等で固定する
  5. 紙の上から加工箇所に目打ちをして目印を付ける
  6. 紙を外し、目印通りに加工する
重要なのは、裏側から加工することである。ネジの取付孔をドリルで開ける場合、表から加工すると、爪付ナットの位置が著しくずれてしまうが、裏から開けれ ば多少曲がっても位置はずれない。ユニットの単位を逃がす部分は、裏表があるので、実物を見ながら間違えないよう加工する。

このシステムの音は、Nf5Exのキャラクタに支配される。バランスの良いリアルな音だが、浸透性の強い高域が好みを分けるかも知れない。中域の歪感は、 極めて小さいと思う。
33Hz以上の低域は十分出るが、TBのユニットを使ったモデルより低域多少レベルが多少低いように感じる。振動板面積の違いによるものと思う。
Fostexの13cm限定販売ユニットを使っても面白いと思う。

結論として自分の好みに合う出来となったうえに、前作のTR130c型よりも一回り小さくまとまった成功作と思う。

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MCAP-CRは、2012年に特許が 成立しています(特許第 5083703号)
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評価のために、実際に製作することは、商用利用とは看做しません。
また、商用以外の使用に制限はありません。

連絡先: mcapspeakers@gmail.com

管理人: 鈴木 茂

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